「ツケ」を子孫に払わせるつもりか・・!?

2020年2月26日現在、日本(と言うか世界中)がコロナウイルスに戦々恐々としている中、こっそりと一つの統計値が財務省から発表されました。

平成31年度の国民負担率を公表します

国民負担率」とは、 国民の所得に占める税金や社会保険料の割合のことで、国民がどれだけ公的な負担をしているかを示しています。また、「潜在的国民負担率」とは、 国民負担率に次世代の国民負担となる財政赤字分を加えて算出したものです。 また、同じページに「国際比較」という事で、諸外国との比較も出されていますが・・これが、恣意的とも言える見せ方をしているとしか思えません。どうやら、お役所は「見せたくない事実」は分かり難いように”数字”で公表する一方、「都合の良い事実」は、分かり易い”絵”にして見せたいようです。
それでは、まず、「国民負担率」を分かり易いように、エクセルでグラフにしてみましょう・・。

これを見ると、1970年では25%だった負担率が、今では倍近くになっています。そしてここで重要なのは「潜在的な国民負担率」です・・すなわち、子孫世代へのツケ払いの部分を含めた負担率ですが、これが実に50%に達しています。

一般的に、この負担率が50%を超えると言うことは「稼ぎの半分は税金と社会保険に持っていかれる」ことですから、”稼げば稼ぐほど取られる状態”になり、当然のように労働意欲は失われていくと言うわけです。事実、年収が850万円を超えると税負担が増え、かえって手取りが減るという逆転現象も起こっています。

これから少子高齢化で増々、社会保険の負担は重くなっていきますし、先日も「介護保険の値上がり」が決まりました。そして、消費税はまだまだ上がるようですから、この負担率は今後も下がることは決してないでしょう。そして、このグラフからは、国民は「税金の集金マシーンである」というだけではなく、このままでは日本は窮乏に向かって行くという暗い未来しか読み取ることができません。

今ですらこの状態ですから・・この先、我々の子孫世代が、この負担に耐えて、果たして社会のために一生懸命に働いてくれるでしょうか?

もう一つ、公表されたデータを見てみましょう・・「国民負担率の国際比較」です。

(なぜかデータではない)この”分かり易いグラフ”の言わんとするところは、「外国に比べたら、日本はまだまだ低いので、これからも上げますよ・・」でしょう・・。でも、「ちょっと待って下さい!?」フランス国民やスウェーデン国民は、負担相応の社会サービスを享受していますし、スウェーデン、ドイツに至っては、子孫世代にツケを回してはいません!また、この報告書ではそれら諸外国が、どの程度のサービスを提供しているかは語っていません(それは、厚労省のお仕事だからです)。

我々国民は社会負担の必要性は理解するとしても、「国は”負担”に見合ったサービスを提供しているか? そのツケを次世代に払わせようとしていはないか?」を十分にチェックする必要はあるのではないでしょうか・・。コロナウイルスの衝撃は一過性のものでしょう。しかし、社会負担の問題は、これから長く続く「確定した未来」なのです。「今の世代が”税と社会保障”に対して無関心でいること・・それこそが、次世代に対する責任放棄に他ならない・・」これが、私の結論です。

市場と会計: 人間行為の視点から
吉田 寛 (著)
春秋社 (2019/7/24)
◆会って功績を計る…その歴史的変遷から会計の本来の役割と機能を明らかするのが同書のメインテーマですが、それとは別に「税と国民の負担」についても鋭い考察を展開しています。イチオシ!