直接原価計算 ~ホントウの原価は?~

会計は、大きくは「財務会計」「税務会計」「管理会計」の3つに区分されますが、「原価計算」は主に製造業(工場会計)における「製造原価」を把握のための会計です。また、製造原価は、「制度会計(要は、納税のための会計)」の決算書においてそのまま”原価”となるため、キチンとした計算と管理が求められるわけですが、決算用と言う以前に、 原価が分からなければ 「いくらで売ったらいいか」が決められないわけですから、経営管理上も非常に重要です。

また、「原価計算」は簿記の試験においても重要なアイテムで、「日商簿記3級」は商業簿記(商品の仕入れ・販売)までですが、「簿記2級」では商業簿記に加えて工業簿記(原価計算)も試験対象になります。

原価計算には「全部原価計算」と「直接原価計算」があり、その特徴は以下の通りです;
全部原価計算:製造にかかわるすべての費用を原価に組み入れ計算する、制度会計で認められた一般的な計算方法。
直接原価計算:製造費を変動費・固定費に分類し、製品個々の実質的な原価を把握することを目的とした、元はアメリカで開発された計算方法。主に管理目的だが、”調整”しない限り決算用には使用できない

「おやっ」と思われた方もいるでしょう。。。原価計算なのに「制度会計」や「決算」と言う言葉が出てきましたね。。なぜでしょう?

制度会計(納税目的の会計)では、決算の一年間を「期間(会計年度)」と呼び、その会計期間の”収益獲得に貢献した部分だけ”をその期の期間費用として認識・測定するという「費用収益対応の原則」いう大前提があります。少しテクニカルな話になりますが、”全部原価計算”では製造で発生した費用 (原材料費、加工費、間接費)のすべてが(その期の)費用として”原価”になるわけではない (即ち、税務上の”損金”に認められない)ということです 。

初学者の方はイメージがつきますか・・?
詳しくは動画セミナーのに譲りますが、 結果的に、「在庫品(売れ残った)となった製品」にかかった原価は、その期の決算上の費用にならない・・ということです。ではそうなると、どうなるでしょう・・?
答えは、「在庫が増えれば増えるほど、原価が下がって、その分”利益”が上がる」ということです。ちなみに、費用にならなかった原価は”在庫品”としてバランスシートに計上されることになります。

一方で「直接原価計算」においては、管理目的のより実質的な原価計算ですので、「期間原価(固定費)」はすべて原価として費用として計算しますから、一般的に言って、直接原価計算の利益(課税所得)の方が、全部原価計算のそれより”少なく”なります。ですから、制度会計においては、直接原価計算は認められないのです。

少し込み入った話になりましたが、詳しくは動画セミナーでご覧ください。
冒頭で述べましたが、(全部)原価計算は簿記2級の試験科目です。試験ということは、試験用に(非現実的な)アレンジをしてある部分があり、それが「原価計算は難しい」というイメージにつながっているのは否めません。また、実際の原価計算ともなりますと、製品、規模、工程等によって、各企業がそれぞれの原価計算を行っていますから、そのすべてについて解説することはできませんので、セミナーでは、「全部」と「直接」の違いを中心に基本的な考え方を解説していきます。

セミナー本編:1時間6分

【関連セミナー】
直接原価計算(補講)

ショートプログラム

番組をテーマ毎にショートプログラムとして分割しています(内容は同じです)。

【1.原価計算概説】
全部原価計算、直接原価計算の基本的な違いについて解説します。

【2. エクセル実習】
実際にエクセルの例題を解きながら、「全部」と「直接」の差異の原因がどこにあるのか理解しましょう。

【3. 原価BOX】
原価の流れを理解するには「イメージ」でとらえることが重要です。

【4. 直接原価計算の意義】
原価計算を工場管理者の立場から考えてみましょう。